BREWING METHOD GUIDE
デコクションとは?ダブル・トリプルの違いと糖化の仕組み
著者:ワールドビール編集部 | 初公開:2016年1月25日 | 更新・情報確認:2026年10月8日
デコクション(decoction)とは、麦芽と湯を混ぜたもろみの一部を取り出して煮沸し、元へ戻す糖化方法です。戻す部分の熱で全体の温度を上げます。一般に、この操作を2回行うのがダブル、3回行うのがトリプルです。
- 煮るのは発酵前の仕込みの一部
- ダブル・トリプルは工程の回数
- 製法の違いは品質の順位ではない

デコクションとは?ビールの糖化で行う製法
デコクションは、ビールを発酵させる前の「糖化」で使う方法です。糖化では、麦芽に含まれる酵素が、でんぷんを糖などへ分解します。
麦芽は、穀物を発芽させて乾燥したもの。砕いた麦芽と湯を混ぜた、固形分を含む状態をもろみ(マイシェ)と呼びます。糖化後に固形分をろ過して得る液体が麦汁です。生じる成分は麦芽糖だけではなく、ほかの糖やデキストリンも含みます。
糖化:酵素の働き
でんぷんを糖などに分解する工程。
発酵:酵母の働き
後の工程で、酵母が糖からアルコールや炭酸ガスなどを生みます。
- 01麦芽の粉砕
- 02糖化デコクションはここ
- 03ろ過
- 04麦汁の煮沸糖化とは別の煮沸
- 05冷却
- 06発酵
- 07熟成
デコクション中の一部煮沸と、ろ過後に行う麦汁の煮沸は別の工程です。代表的な流れを簡略化しています。
参考:ビール酒造組合:ビールの造り方 / VLB Berlin・B.H. Meyer:Decoction Mashing(醸造講義資料PDF)
ダブルデコクションとトリプルデコクションの違い
違いは、もろみの一部を煮沸して戻す回数です。1回ならシングル、2回ならダブル、3回ならトリプルと呼びます。
スマートフォンでは表を左右にスワイプできます →
| 項目 | シングル | ダブル | トリプル |
|---|---|---|---|
| 一般的な回数 | 1回 | 2回 | 3回 |
| 行う操作 | 一部を取り出し、煮沸して戻す | 同じ基本操作を2回 | 同じ基本操作を3回 |
| 名称から分かること | 回数 | 回数 | 回数 |
温度・時間・取り出す量はレシピと設備により異なります。回数は品質や味の強さの格付けではありません。
ダブルデコクション製法とは
一部を煮沸して戻す操作を2回組み込む方法です。どの温度段階で行うか、何分煮るかまで「ダブル」という名称で決まるわけではありません。
トリプルデコクション製法とは
この操作を3回組み込む方法です。3回発酵させる、完成したビールを3回煮る、3倍おいしい、という意味ではありません。ピルスナーウルケルなどの公式採用例を見ると、商品説明とのつながりが分かります。
どのように糖化する?デコクションの工程図
主槽にはもろみを残し、別釜へ移した一部だけを煮沸します。熱くなった部分を戻して混ぜることで、主槽の温度を次の段階へ上げるのが基本です。
1一部を取り出す
主槽のもろみの一部を別釜へ移す。全量を移すわけではありません。
2別釜で加熱・煮沸
取り出した部分を加熱して煮沸する。主槽側は煮沸せずに保ちます。
3主槽へ戻す
煮沸した部分を、もろみが残っている主槽へ戻します。
4混ぜて温度を上げる
混合により全体が温まる。次の工程に必要な温度へ調整します。
概念図です。槽の大きさ、液面、温度、取り出す割合は実際の数値を示しません。加熱途中に温度を保つ工程などは省略しています。
ダブル・トリプルでは、この基本操作を仕込みの設計に応じて繰り返します。図は特定のメーカーの設備を再現したものではありません。
参考:麦芽メーカーMalteurop:デコクションの仕組みと回数 / VLB Berlin・B.H. Meyer:Decoction Mashing(醸造講義資料PDF)
インフュージョン法との違い
比較の中心は、もろみの温度をどう管理するかです。インフュージョン法は、一部を煮沸して戻す操作を通常は行わず、湯の追加や主槽の加熱などで温度を管理します。
スマートフォンでは表を左右にスワイプできます →
| 比較項目 | デコクション | インフュージョン |
|---|---|---|
| 温度管理 | 一部を煮沸して戻す | 湯の追加や主槽の加熱など |
| 一部の煮沸・復帰 | 特徴となる操作 | 通常は行わない |
| 温度の段階 | 設計に応じて変える | 一定温度型・段階的昇温型がある |
| 作業・設備 | 移送と別釜での加熱を伴う | 方式・設備によって異なる |
| 味の評価 | 原料・発酵なども含めて判断 | 原料・発酵なども含めて判断 |
インフュージョン=必ず一つの温度、ではありません。一定の温度で糖化するシングル・インフュージョンのほか、段階的に温度を上げるステップ・インフュージョンもあります。
また、インフュージョンでも、ろ過後の麦汁を煮沸する工程はあります。「一部を煮沸して戻さない」ことと、「醸造中に一切煮沸しない」ことを分けて理解しましょう。
デコクションで味はどう変わる?
麦芽の香味などを引き出すために採用するメーカーがありますが、仕上がりは製法だけでは決まりません。どんな味を目指して使っているかを、商品ごとの説明から読み取ります。
ピルスナーウルケルは、トリプルデコクションを風味や色づきに関わる工程として紹介しています。マスターズドリームは、採用する麦芽の持ち味を引き出す手段として説明しています。これらは各メーカーの狙いであり、すべてのビールで同じ官能差が出るという比較実験の結果ではありません。
原料の配合、ホップ、酵母、発酵・熟成条件も味を変えます。「必ず甘い」「必ず濃い」「インフュージョンより高品質」とは言い切れません。製法名は、好みに合うビールを理解する手がかりの一つです。
参考:ピルスナーウルケル公式:トリプルデコクションと味の説明 / サントリー公式:マスターズドリームの製法
麦芽の香りやコクに興味があればブラウンエールの味と特徴へ。苦味の数値との関係はIBUの見方と苦いビールの比較で整理できます。
デコクションを採用するビールの例
以下はメーカー公式で確認できた、トリプルデコクションの3例です。ダブルの例やランキングを数合わせで加えず、製法名と説明の対応を見てみましょう。
スマートフォンでは表を左右にスワイプできます →
| 銘柄 | 公表する製法名 | 公式説明の要点・確認元 |
|---|---|---|
| ピルスナーウルケル | トリプルデコクション | 風味・色づきに関わる工程。メーカー公式 |
| サントリー生ビール | トリプルデコクション | 「トリプル生」は製法によって素材の特徴を引き出す考え方を表す。公式FAQ |
| ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム | トリプルデコクション製法 | ダイヤモンド麦芽の持ち味を引き出す製法として紹介。公式ブランドページ |
メーカーの説明を要約しています。個々の設備や仕込み条件が同一という意味ではありません。同ブランドの全商品・過去仕様へは一般化しません。
購入リンクにはアフィリエイト広告を含みます。現在の在庫は未確認です。商品画像は既存の生成イメージで、現行ラベルを保証するものではありません。
デコクションでよくある質問
トリプルは3回発酵させるという意味ですか?
いいえ。トリプルデコクションは、糖化中の一部煮沸・復帰を3回行う呼び方です。酵母が働く発酵とは別の工程です。
デコクションと通常の麦汁煮沸は同じですか?
別の工程です。デコクションは糖化中のもろみの一部を扱い、通常の麦汁煮沸はろ過後に行います。工程図では「糖化」と「麦汁の煮沸」を分けています。
インフュージョン法のビールは味が薄いですか?
製法名だけで味の濃さは決まりません。麦芽の配合や発酵条件なども関わるため、具体的な商品の香り・コク・後味を確認しましょう。
ラガーはすべてデコクションですか?
いいえ。ラガーは発酵の分類で、デコクションは糖化の方法です。異なる視点の言葉なので、ラガーという名前だけで糖化方法は判断できません。
参考情報・更新内容
製法名を知ると、商品説明の「回数」と「味の狙い」を分けて読めるようになります。次に銘柄を選ぶときは、製法に加えて原料や香味の説明も確かめてみてください。
出典一覧と図解について
- ビール酒造組合:ビールの造り方
- 麦芽メーカーMalteurop:デコクションの仕組みと回数
- VLB Berlin・B.H. Meyer:Decoction Mashing(醸造講義資料PDF)
- ピルスナーウルケル公式:トリプルデコクションと味の説明
- サントリー公式FAQ:「トリプル生」の意味
- サントリー公式:マスターズドリームの製法
2026年10月8日確認。一般的な仕組みは醸造資料、採用銘柄の説明はメーカー公式を参照。図は資料を基に編集部が独自に作成した模式図で、既存資料の図を転載したものではありません。温度・時間・配分を示す醸造レシピではありません。
執筆・編集:ワールドビール編集部
初公開:2016年1月25日/2026年10月8日:回数の比較、工程図、製法比較、公式採用例を追加。重複説明・FAQを整理。



